ハーグ条約(Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)
ハーグ条約は、国境を越えた子の不法な連れ去りや留置があったときに、原則として子を元の居住国に返還する手続きや、国境を越えた親子の交流を定めた条約です。日本とオーストラリアはどちらも締約国で、窓口は日本が外務省ハーグ条約室、オーストラリアが司法長官府の中央当局です。
条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。
どんな条約か
ハーグ条約の正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」です。1980年に採択されました。日本では2014年に発効しました(外務省のページ(新しいタブで開く))。外務省の申請案内では、発効日は2014年4月1日です。
条約の考え方
外務省の「よくわかる!ハーグ条約」の説明では、子が不法に連れ去られたり留置されたりした場合は、原則として子を元の居住国(常居所地国)に迅速に返還します。そのうえで、子の今後は、その国の裁判所で決めるのが望ましいという考え方です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 常居所地国 | 子が相当長い期間住んでいた国。どこにあたるかは裁判所が判断する |
| 不法な連れ去り | 一方の親の監護の権利を侵害して、子を常居所地国から外国へ連れ出すこと |
| 留置 | 出国後、子が常居所地国へ戻ることを妨げられている状態。約束の期限を過ぎても帰さない場合など |
条約が使える場合
子の返還について条約が使えるのは、外務省の説明では次の場合です。子や親の国籍は問われず、日本人同士の場合も対象になり得ます。
- 子が16歳未満である
- 子の常居所地国と、子が今いる国のどちらも締約国である
- 連れ去りや留置で、残された親の監護の権利が侵害されている
16歳以上の子の場合や、同じ国の中での連れ去り、締約国以外の国との間の連れ去りには使えません。
日本とオーストラリアの窓口
条約は、締約国に中央当局(Central Authority)を置くよう定めています。
| 国 | 中央当局 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 日本 | 外務大臣(実務は外務省領事局ハーグ条約室) | 03-3580-3311(代表)。平日9時〜17時(12時30分〜13時30分を除く) |
| オーストラリア | 司法長官府(Attorney-General’s Department)の国際家族法課(International Family Law Section) | 1800 100 480(国外からは +61 2 6141 3100)、australiancentralauthority@ag.gov.au |
司法長官府のページ(新しいタブで開く)は、オーストラリアとの間で条約が発効している国に日本を挙げています。司法長官府は、法律相談には応じられないとしています。
返還手続きと親権の関係
外務省は、条約にもとづく返還手続きは、子を常居所地国に戻すかどうかを決める手続きだと説明しています。親権や監護権を決める手続きではありません。返還先は常居所地国で、残された親のもとに返す手続きでもありません。最終的に判断するのは、子がいる国の裁判所などです。
手順
子がオーストラリアから日本へ連れ去られた場合
残された親は「外国返還援助申請」を出せます。
- オーストラリアの中央当局(司法長官府)か、日本の中央当局(外務省)に申請する。
- 外務省が申請書類を審査し、援助決定か却下を通知する。援助決定は、子の返還について何かを決めたという意味ではない。
- 外務省は、当事者間の連絡の仲介、弁護士紹介制度の案内、裁判外紛争解決手続(ADR)機関の紹介などの支援をする。
- 外務省への申請とは別に、東京家庭裁判所か大阪家庭裁判所に子の返還を申し立てることができる。
外務省への申請は、電子メールか郵送で受け付けています。必要書類と却下事由は外務省の申請方法のページ(新しいタブで開く)に載っています。
子が日本からオーストラリアへ連れ去られた場合
外務省の手続の流れでは、残された親は「日本国返還援助申請」を、外務省か、子がいる国の中央当局に出せるとされています。
司法長官府のページの説明では、海外の親からの申請は、その国の中央当局を通じてオーストラリアの中央当局に届きます。受理されると、州の中央当局(通常は州政府の機関)が裁判所に申し立てます。返還の審理は、連邦巡回・家庭裁判所(Federal Circuit and Family Court of Australia)か西オーストラリア州家庭裁判所(Family Court of Western Australia)で行われます。
オーストラリアにいる親(応じる側の親)には裁判書類が送られます。司法長官府は、法律の助言を受けるよう強く勧めています。応じる側の親は、国際的な子の奪取の被申立人支援制度(International Child Abduction Respondents Scheme、ICARS)による費用の援助を受けられる場合があります。
子がオーストラリアから連れ出されそうなとき
司法長官府は、次のような対応を案内しています。
- 子の安全が心配なときは、すぐに地元の警察に連絡する。
- オーストラリア連邦警察(Australian Federal Police、AFP)は、子の名前を「Family Law Watchlist」に載せることができる。載せるための裁判所命令について、法律の助言を受ける。
- オーストラリアのパスポートの発給前に注意を促す「Child Alert Request」を、オーストラリア旅券局に出すことができる。すでにパスポートを持っている場合は、渡航を止められない。
費用
外務省は、援助決定を受けた事案で、裁判資料の翻訳支援などを一定の範囲で無料で提供しています。裁判や弁護士の費用は事案によって違うため、各中央当局への確認が必要です。
日本とのちがいと注意点だよ!
- 大使館のページ(新しいタブで開く)によると、オーストラリアの1975年家族法(Family Law Act 1975)では、18歳未満の子の親権は、離婚後も基本的に父母の双方が持ちます。
- もう一方の親の同意などなく子を国外へ連れ出すと、オーストラリアでは犯罪になる場合があります。条件は司法長官府のページ(新しいタブで開く)や大使館で確認してください。
- 大使館は、18歳未満の子の日本のパスポートを申請するとき、両方の親権者が同意しているかを口頭で確認しています。
- 子を連れて国外へ移ることを考えている場合は、家族法に詳しい弁護士に相談してください。無料の相談先は「無料の法律相談」にまとめています。
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