義務投票制(Compulsory voting)
オーストラリアの連邦選挙と国民投票では、18歳以上のオーストラリア市民に、選挙人名簿への登録と投票が法律で義務づけられています。正当な理由なく投票しないと、罰金の通知が届くことがあります。市民権のない人(日本国籍の人など)は連邦選挙で投票できません。
義務投票のしくみ
オーストラリアの連邦選挙と国民投票(referendum)では、投票が法律で義務づけられています。選挙を管理するのは、オーストラリア選挙管理委員会(Australian Electoral Commission、AEC)です。
AECの義務投票の解説(Electoral Backgrounder)(新しいタブで開く)がまとめる経緯は次のとおりです。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1912年 | 選挙人名簿への登録が義務になる |
| 1924年 | 連邦選挙での投票が義務になる |
AEC自身は、登録や投票を義務にすべきかどうかについて意見を持たず、議会が決めることだとしています。
義務の対象
連邦選挙の選挙法(Commonwealth Electoral Act 1918)は、18歳以上のオーストラリア市民に選挙人名簿(electoral roll)への登録を義務づけています。名簿に載った人は投票の義務があります(連邦議会のInfosheet 8(新しいタブで開く))。
登録できるのは、次のすべてに当てはまる人です。
- オーストラリア市民である
- 18歳以上である
- 今の住所に1か月以上住んでいる
16歳と17歳の人は、18歳になる前に登録を申し込めます。1984年1月25日時点で名簿に載っていた英国臣民(British subjects)も、引き続き名簿に載ることができます。
対象にならない人・投票が義務でない人
AECの解説では、次の人は登録や投票ができないとされています。
- 認知機能の障害により、登録と投票の意味を理解できない人
- 反逆罪(treason、treachery)で有罪になった人
- 3年以上の懲役刑に服している人(投票できない)
南極にいる選挙人、海外に住む一定の選挙人、決まった住所のない選挙人は、投票できますが義務ではありません。
投票の方法
投票日は土曜日です(Infosheet 8)。投票日に投票所で投票するほか、次の方法があります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 期日前投票(pre-poll) | 投票日に行けない理由がある人が、事前に投票所で投票する |
| 郵便投票(postal vote) | 申し込んだ人に投票用紙が郵送される |
| 不在者投票(absent vote) | 登録した選挙区の外の投票所で投票する |
期日前投票や郵便投票ができる理由には、投票日に登録した州・準州や選挙区の外にいる、投票所から8km以上離れている、職場を離れられない、病気や出産間近である、などがあります。
投票しなかった場合
正当で十分な理由(valid and sufficient reason)なく投票しないことは、選挙法違反です。投票しなかったと見られる人には、選挙の後3か月以内に通知(penalty notice)が郵送されます。
通知を受けた人は、決められた期間内に次のどれかを選べます。
- 投票したことを説明する
- 投票しなかった正当で十分な理由を伝える
- A$20の行政上の罰金(administrative penalty)を払う
罰金を払わず、理由も認められない場合は、裁判所で起訴されることがあります。有罪になると、1罰金単位(penalty unit)の罰金と、裁判の費用の支払いを命じられることがあります。
投票日に国外にいた人や、すでに理由を伝えた人などには、通知が送られません。
正当な理由と認められないもの
AECの解説では、過去の裁判で次のような理由が認められなかったことが紹介されています。
- どの候補者も支持できない、好みの候補者がいない
- 所属する政党が投票を禁じている
一方、病気や事故など物理的に投票できなかった場合は、理由として認められる例として挙げられています。投票しないことが自分の宗教上の義務だと信じていることも、法律で正当な理由とされています。どの理由が認められるかは、個々の事情によります。
手順
オーストラリア市民が選挙人名簿に登録する流れです。
- AECの登録のページ(新しいタブで開く)からオンラインで申し込む(紙の申込書も使える)。
- 本人確認として、次のどれかを入力する:オーストラリアの運転免許証の番号、オーストラリアのパスポートの番号、カードの情報、市民権の番号、または登録済みの人による本人確認。
- 申込の受付番号で、手続きの状況を確認する。
18+カードや年齢証明カード(Proof of Age card)は本人確認に使えません。この登録で、連邦選挙のほか、州・準州と地方の選挙にも参加できます。AECが実施するのは連邦の選挙と国民投票だけです。
費用
登録と投票に費用はかかりません。投票しなかった場合の行政上の罰金はA$20です(2026年10月時点)。裁判所で科される罰金の単位(penalty unit)の金額は、物価に合わせて自動的に上がります。
日本との違い・注意点
- 連邦選挙で投票できるのはオーストラリア市民です(一部の英国臣民を除く)。日本国籍の人は、永住ビザを持っていても連邦選挙の登録・投票の対象になりません。市民権は「市民権の取得」で扱っています。
- 日本では、総務省が選挙権を、18歳になると与えられる大切な「権利」と説明しています(総務省のページ(新しいタブで開く))。オーストラリアの連邦選挙では、市民にとって投票は法律上の義務です。
- オーストラリアに住む日本国籍の人は、在外選挙制度で日本の国政選挙に投票できます。対象は、18歳以上の日本国民で、在外選挙人名簿に登録され、在外選挙人証を持っている人です(外務省のページ(新しいタブで開く))。在外公館で登録するには、その在外公館の管轄区域に3か月以上続けて住んでいる必要があります。
- 州・準州や地方の選挙の日程と方法は、各州・準州の選挙管理委員会が案内しています。AECは連邦の選挙だけを実施します。
- 個別の事情で投票の義務や罰金について判断が必要なときは、AECに問い合わせるか、法律の専門家に相談してください。AECは法的な助言はできないとしています。
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